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JJの気まぐれブログ

お金より心の豊かさが欲しい

久々の更新となったが皆様いかがお過ごしだろうか。僕にとってはなかなか忙しい夏と秋の初旬だった。本業の製薬会社での勤務に関しては、6月に無事転職し数ヶ月かけてスケジュールに慣れた。副業①の日本食レストランでのサーバー業は順調で、既に始めて1年半弱ということもあり、かなりスピーディーに回せるようになってきた。4月から始めた副業②の日系新聞「ソイソース」の執筆・編集業に関しても、始めて半年で様々な記事・特集に携わることができ、お陰でライティング力も少し付いたような気がする。お気づきの人がいるかはわからないが、過去のブログの記事は「ですます調」だったのが、今回は完全に新聞のコラムの書き方になっている。

3個も仕事をしていると休みなんてないのでは?と思われる方もいるかもしれないが、意外とそんなこともない。本業は日〜水に10時間ずつ、サーバーは基本水金夜のみ、そして編集・執筆はリモートのため会社で暇な時や、仕事終わりにパパッとやっているので負担はそこまでではない。取材に関しては時間は取られるが、それを考慮しても、木金土は金曜夜のシフト以外は、8割以上はプライベートな時間に充てている。

さて、本題に入るが、この記事のメインテーマは「お金」だ。昨今円安がますます加速していて、4年半前まで日本に14年住んでいた僕にとっても、他人事ではないニュースだと感じている。そして、日本での賃金は安いから海外に出稼ぎに、なんてネット記事もいくらか見受けられるようになった。今回はそれを読んでみての感想と、賃金が日本に比べて高いアメリカのシアトルで働いている身としての思いもシェアできたらなと思う。

まず読んでみてふと思ったのは、海外で働くことはそんな簡単ではないなということ。言語・文化が違うばかりか、そもそもビザを初めルールが国によって異なる。これはほぼどの国にも言えることだが、外国人は基本的には生きづらい世の中になっている。アメリカ一つをとってみても、働く権利を得ることはそこまで容易ではない。そしてそのビザやグリーンカード(永住権)を取れたとしても、キープするための選択肢はアメリカに住み続けることのみだ。僕がアメリカで仕事をしているのも、親が引退したのにまだこっちにいるのもそれが理由。グリーンカードを5年以上所持して、国籍をアメリカに変えない限りは、他の国に数年以上住むという選択をした時点で、苦労して取ったビザやグリーンカードとはおさらばになるのだ。まあ、カナダやオーストラリアでワーホリで1年稼ぐという意味の出稼ぎも悪くはないだろう。しかし、あたかも誰でも賃金の高い所に稼ぎに行こうぜ〜というような記事には違和感を覚えた。

また、賃金が高いということは物価も高い。賃金2倍、物価2倍だったら貯金も2倍だから結局海外の方がいい、というコメントが散見されたが、僕も確かにそれはそうだと思う。結論、現在の為替のレートなら、少なくともアメリカと日本を比べたら、アメリカで働く方が貯金はできるし、資産は増やしやすい。ただ、今回はその貯金の絶対額だけでなく、労働環境や価値観などその他のソフトな要素を含めて、自分の思いをシェアしたい。

一つ大事な前置きとして、僕は日本で社会人をしたことがない。そのため、日本での労働環境がどんなものか、そして給料に関しても正直あまりよく知らない。またそれは勤めている企業や個々のポジションによっても異なるだろうから、一般化して話せる内容でないことは重々承知している。自分勝手な先入観が入っていることを承知の上、読み進めて頂きたい。

僕は前述の通り、3つの仕事を掛け持ちしているが、年収は合計すると約10万ドルほどだ。現在のレートでそれを日本円に直すと1400〜1500万円くらいになる。大卒社会人2年目としての給料としては円に直すとかなり良く聞こえる。だが、僕が住んでいるのはシアトル。社会人の半分ほどは年10万ドルは稼いでいるため、僕は3つ掛け持ちしてやっと平均程度だ。もちろん年齢を考慮すると悪くはないが、実家暮らしで親のサポートがあるからこそ掛け持ちできているだけでもある。

10万ドルが年収であっても、3分の1ほどは税金やベネフィットで持っていかれるため、手取りは月5000~6000ドル程だと思ってもらえれば良い。そのうち車のローン、妹のお小遣い、猫の餌代、デート代、ガソリン代など諸々引いて貯金・または投資に回せる額は月3500~4000ドル。日本円に直すと50~60万円らしい。一応年間目標は最低4万ドルに設定しているが、こんなに貯められるのも家賃や生活費がゼロだからだ笑 

もし部屋を借りようとすると月2000ドルほど、日用品やスーパーでの買い物で月1000ドルくらいは持っていかれるだろう。そして生活することに精一杯で2つ副業する余裕なんてないだろう。そう考えると、もし年7万ドルの本職だけで一人暮らしをすると考えたら、年間1万ドルも貯められないと思う。つまり親に年3万ドル補助してもらっていると言っても過言ではない。

年収や貯金額を円で考えてみると、確かに恵まれているなと思うことはあるが、余裕があるかと言われるとそうは感じないし、そんなに幸せでもない。唯一ここで働いていていいなと思うのは働きやすさだ。残業がなく、有給で長期休暇も取れるし、会社に関しては病欠で休める日数が無限だ。会社では1週間あたり実際仕事らしい仕事をしているのは10〜20時間程度。編集も週20時間の給料は貰っているが、実際は5〜10時間くらいしか働いていないため、とにかく楽だ。これは職場に恵まれていることと、僕が効率良く仕事をこなしていることもあるが、平均すると日本よりは遥かに努力量は少なくて済む気がする。ということで、労働量と休みの多さに関しては満足している。

ここまで聞いているとアメリカは働きやすいし給料もいいから最高じゃん!という結論になってもおかしくないと思う。しかし、本題はここからだ。年10万ドル稼いでも、年4万ドル貯めても心に余裕はないし、幸せでもないのだ。大きな理由は周りの環境だ。シアトルにはグーグル・アマゾン・マイクロソフトとテク企業のエース級がバンバン並んでいて、そこで働く20代は軽々10~20万ドルを稼いでいる。そんな人達が多すぎて、自分は3つも掛け持ちして底辺か、とかなり自信喪失をすることが多い。また、彼らを含めここに住む人達の多くはお金に関してとてもオープンだ。耳を塞ぎたくても勝手に、エンジニア・プログラマー・専門職・自営業達のお金に関する自慢エピソードが聞こえてくる。

またアメリカでは引退の目安額は100〜200万ドルだと言われている。親のスネをかじって副業までして年4万ドル貯めた所で、引退最低ラインの100万ドルまで投資額の変動次第ではあるが、15〜25年はかかるだろう。ただ40〜50歳まで親と住めるはずがない。こんな一気に貯められるのもせいぜい後数年だ。そのため焦りがあり、4万ドル貯めても100万分の4万という考え方になってしまい、余裕は一切ない。30代での引退がかっこいいとされる最近の風潮に、自分の価値観もかなり影響された。誰かのために働くのは自由がない。早くスキルをつけて、スタートアップを成功させ、それを高値で売って引退。資産運用は投資を基本に、とにかくいかに自分が働かずして、自分の資産を増やせるかが人生の鍵。こんなマインドセットでは年に20万ドル稼いでも、10万ドル貯めても心から幸せになれるのだろうか。僕にはまだわからない。

何が言いたいかというと、一度こちらに来たら、フィールドはこちらなわけだ。そのため、日本にいた時とは自分の価値観も考え方も変わる。こちらのスタンダードでモノを見るようになると、単に円換算しただけではわからない要素が出てくる。そんな中に住んでみると、ふと日本円に換算して「あ、日本でこの額稼ぐのは難しそうだな」とは思っても、「こっちの方が裕福だし幸せだし最高〜」なんてことは全くない。2年目で既に少し疲れてきたので、後数年したらどこか別の場所に行くなりして自分のビジネスを始めてみたいなとも思う。お金があっても心が貧しければ結局意味ないじゃんと思う今日この頃。心を豊かにするためにはどこで何をして生きていけば良いのだろう。考え方が全てだとは思いつつも、何かベターな選択肢が世界のどこかにあるのではないか。そんなことを妄想しながら、日々誰かの元で働く23歳JJのブログ記事、これにて終わり。