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JJの気まぐれブログ

MBA合格と複雑な感情

UWMBA

 

 MBAとはMaster of Business Administrationの略称で、日本語では経営学修士号だ。僕が今回合格したのは、UW (University of Washington) Seattle “Foster School of Business” Evening Part-time MBA プログラム。UWには他に Full-time MBA という、よりスタンダードな、学生フルで2年間のものと、Hybrid MBA という、9割の授業がオンラインで行われるものがある。パートタイムとハイブリッドは、フルタイムの仕事をしながら取得できるように設計されていて、パートタイムは平均3年間、ハイブリッドは平均2年間卒業までにかかる。

 僕がパートタイムを選んだ理由は消去法。ハイブリッドは社会人経験3年以上という条件があり、まだ2年しか働いていない僕はそもそもアプリケーションを出せない。そして仕事を辞めてフルタイムの学生に戻るのは嫌だったため、UWMBAとなると、可能性があるのがパートタイムのみだったのだ。

 最近ではオンラインのプログラムも充実しているため、もちろん他の大学のMBAに出すことも出来たが、ほぼ調べてすらいない。以前もブログに書いたが、僕の中でこの秋MBA進学という選択肢はそこまで考慮に入っていなかったため、受かったら入ってもいいところと考えるとそれこそUWのみだった。自分がUWを評価しているというよりかは、オンラインではモチベーションを保てる気がしない+現在仕事をしているところがシアトル+家から通える範囲内で他に名前のある大学を知らない→UWというのに尽きる。

 

MBAの受験プロセス~

 

 結局UWのパートタイムのみに出願したため、残念ながら他のMBAの受験プロセスに関してはあまり知らないが、準備に何が必要かは似ていると思うので軽く紹介したい。コロナ禍で不必要になっているところも多いが、特にトップスクールだとほぼ必須になってくるのがGMATまたはGRE。これはアメリカの大学院特有の試験のうちの一つで、GMATビジネススクール専用、GREは他の修士号全般、MCATは医学大学院専用、PCATは薬学大学院専用などと、入りたい大学院によって受けなければならない試験が定められている。これらの試験は基本的にいつでも何回でも受けることができるため、日本の大学受験のような一発勝負のものと比べると、ストレスレベルは低い。

 僕が持っていたスコアは、3年前の大学4年に上がる直前の夏休みに受けたもの。GREはセクションが3つあり、Verbalは読解系、Quantitativeは分析系、Analyticalはライティングだ。最初の2項目の点数は130170のレンジで、150が平均点。コロナ禍の夏休みということで暇で準備に時間を割けたこともあり、僕は運良く一発で自分の中での及第点(目標はV:155, Q: 165, W: 4.0だったためオーバーパフォームできた)は取れたので、二度受けることはなかった。スコアをキープできるのは5年ということもあり、せっかくいい点を取れたし使ってみようかという気持ちも少しはあった。

 もう一つの表が、去年の合格者平均点。GREVerbal 155Quantitative 156ということで、僕のスコアでも十分戦えるという判断だった。本来ならGMATも受けた方がいいのだが、今年は今の自分の持ち札で受かるかどうかに興味があったため、GREのみで勝負した。ちなみにその他の比較で言うと、合格者平均の学部時代のGPA3.39なのに対し、僕は3.80を持っていたので、単純な学力の部分だけだったらそこまで劣らないかなと自負していた。

 これら学力系の事前準備さえ済んでいれば、後はそこまで大変ではない。エッセイは必須分2つ+オプショナル2つ。内容は自己アピールや自分の将来像など書きやすいものばかり。会社のマネジャーからの推薦状が23枚必要な以外は、全て自分で終わらせることができる。書類を全てオンライン上で提出すると、次に録画形式の面接がある。そして書類審査に移り、通ると最終グループ面接に招待される。最終グループ面接の内容は前回の記事で書いたため、気になる人はそちらをチェックして欲しい。全てが終わると2週間弱ほど待ち、結果が出る。

 あくまで個人的な感想だが、UWのパートタイムのMBAに限ると、合格難易度はそこまで高くないと思う。僕が今回唯一落ちるかもと懸念していた点は経験値の面。MBAは社会人経験最低3〜5年ほどは必要なイメージがあったため、2年という経験の薄さ・若さを他でどれだけカバーできるかに不安はあった。だが、アカデミックな部分や、ダイバーシティを含めたバックグラウンドに関しては自信があったため、8割型受かるでしょという気持ちで挑んでいた。その分受かった時の感情は、喜びよりかは安堵が大きかった。

 

~入学するメリット~

 

 MBA合格が決まって一番僕が驚いたのは周りの反応。特に親があんなに嬉しそうにしているのは初めて見た。ここまで書いてて伝わったかもしれないが、僕は正直、実力試しのような感覚で出願したため、実際受かったらどうしようかまではそこまで考えていなかった。結果の報告をもらった直後も、これがどういう意味なのかあまり実感を持てずに、数時間誰にも言わずただぼーっとしていた。

 だが、その日の夜満面の笑みで褒めてくれた親の姿、そして合格のニュースを聞いて、わざわざカナダのバンクーバーからうちにお祝いに来てくれた叔母さん家族の反応を見て、これは入るしかないなと決心した。会社のマネジャーや仲の良い同僚、そして日本の友達にも合格したことを伝えたが、皆反応がとてもポジティブで、人生で一番レベルに称えられたような気がする。

 ここからは悩みを書き出すゾーンに入るが、一体世間からのMBAのイメージはどうなのだろう。僕はどの学位もそこまで凄いものだと思っていない。世の中の大抵の仕事は、時間をかければ誰でも出来るものだと思っているため、どの学位・どの大学・どの学部というよりかは、自分が人生においてどう幸せを享受できるか・そのために取ると良い学位は何かで、自分の合う道に進んでいる人こそが勝ち組だと思う。勉強ができるからと言って、トップ大学の医学部に入っても、自分が楽しくなかったら人生というスケールでは本末転倒だろう。

 そういう意味では、製薬会社に興味があって、新卒からこの業界に入れた僕は人生に満足はしている。だが、これから先を考えた時に、「どう幸せを享受できるか」の部分で、価値観が少しずつ変わってきているのも感じる。具体的には、僕の今の価値観での幸せは、自分にとって大切な人たちと共に楽しい時間を過ごすこと。その人たちにセーフティネットを提供してあげられる余裕を持つこと。自分がしていることがある程度社会的に意義があることで、周りから一定のリスペクトを得ること。

 新卒12年目だと製薬業界で違いを作るのは難しいため、サイドで副業をするという形でリスペクトを得る手法を使ってきたが、このやり方だけでは満足できないことに気づいた。やはり本業のクオリティをもう少し上げたい。そして大切な人たちにセーフティネットを提供するためには、もっと経済力が必要になってくるのも確かだ。ということで総合的な判断で、それらを達成するのに近道そうな学位となると、MBAかなとなった。

 MBAはお金の稼ぎ方を学ぶ場所だと解釈している。コネクションができることで他の業界について学べるし、よりお金が稼げる機会が相対的に増えるのは間違いない。製薬会社に残り続けるとしても、MBAを取れば510年分ほどの時間をスキップすることができる。実際うちの部署で30歳前後のマネジャーは2人しかいないが(その他は40歳以上)、その2人は揃ってMBA持ちだ。マネジャーは給料も高いし、リスペクトも受けられる。かなり現実的な考え方で夢がないように聞こえるが、自分の今の価値観では、叶うかどうかよくわからない、半分無謀な聞こえだけカッコいい夢よりも、確実に自分の幸福度を上げ、周りにも幸せを提供できる経済力の方が欲しい。

 

~入学しないメリット~

 

 こんなに行くメリットが多いのに、なぜ心の底からMBA行くの楽しみです!! とはなっていないのか。それは実は今年行かないメリットも少なくないから。

 行かない一番のメリットとして挙げられるのは、柔軟性。一度このプログラムを今年の9月に始めてしまうと、この先3年間はシアトルから抜け出せなくなる。シアトルが嫌いな訳ではないが、ここに来てから6年目に入り、刺激がなくなったというか飽きてきた部分はかなりある。それこそ今年の初めには、今年の終わりか来年には国内移住か海外転勤を考えていたくらいだ。半強制的に一人暮らしができるし、環境を思いっきり変えるとリフレッシュになる。新しい環境に慣れるまでは、経済的に安定させるのも難しいだろうに、先ほど挙げた僕の今の価値観を満たすようなムーブではないかもしれない。だが、他者依存の今の自分の幸せの価値観を、180度変えられる可能性があるのは、環境を変えることしかないという側面もあるのだ。人間は社会的動物であるため、完全に自己依存の幸せ享受システムを構築するのは不可能な気もするが、ここらで少し自分と向き合うのもありだなと思っていたので、MBA入学によってその可能性が3年間絶たれるのは少し寂しくもある。

 柔軟性という意味では、MBAに行かないことでこれまでのフリータイムをキープできるので、副業を続けられる+新しいものに手を出せるというメリットもある。去年の4月に始めた新聞の執筆・編集業はストレスもあるが、かなり楽しい。だが、MBAに入ると流石に時間的に続けられない気がする。テリヤキのビジネスも、MBAに入ってしまうと、あまりお店に出向くことができなくなるだろう。ただこの2つの副業に対するこだわりは当初ほどはないため、MBAを優先する方が、自分的には刺激と学びがあってより楽しい気もする。

 あとはMBA入学において切っても切り離せないのがお金の話し。あまり詳しく話すつもりはないが、学費は3年間トータルで約10万ドルだ。この2年でほぼ家賃免除+副業掛け持ちで貯めてきた僕でも簡単に出せる額ではない。会社が学費を払ってくれる予定ではあるが、全額キープしようと思うと、この先5年間は他社への転職ができない縛りがある(転職したら返せばいいだけではあるが)。聞いた話によると、MBA在学中や卒業直後に、給料アップ+サインボーナスで前の会社が払いきれなかった分の学費は相殺できるというのでそこまで心配はしていない。だが、10万ドルの投資であることは間違いないので、躊躇がゼロなわけではない。経済力をつけるとなると、この投資は中長期的に見たらプラスでしかないとは思っているが、実際にやってみないとどこまでリターンがあるのか確認できないため、探り探りになっていくだろう。

 

~来年行くという選択肢~

 

 これらを全て踏まえると、実は来年の9月のMBA入学が良いのでは? という代案が出てくる。僕が今年ラストミニットで願書を出したのは、親と口喧嘩をした後に自分の価値を証明するためだったのが大きな理由で、もしこのような外的要素がなかったら来年出すつもりだった。今年でなく来年行くメリットは、

 

1、後1年働けば10万ドル貯まるため、お金の心配が更になくなる。

2アメリカ国内他部署やヨーロッパ・アジアに転勤できる可能性がある。

3、他の大学のMBAプログラムを考慮に入れることができる。

4UWだったらハイブリッドプログラムに願書を出せる。

5、新聞とテリヤキの副業に時間を割ける。

6、旅行などバケーションをいつでも好きな時に取れる。

 

などパッと思いつくだけでもかなりあるが、来年までの間に価値観が変わったり、何かハプニングが起こったりして、MBAにコミットできなくなる可能性も大いにある。実際そういう人は同僚に多い。この学位取りたかったけどタイミングを逃して、という人は一人や二人ではない。そういう人が皆口を揃えていうのは”Life happens”。本当は私もMBAを取るつもりだったし今でも取りたいけど、結婚して子供が産まれてでタイミングを逃してしまった。そんな人の話しを聞くたびに、少しでも興味があることはやれる時にやっとかねばなと思うようになった。

 

~結論と夏にやるべきこと~

 

 結論から言うと今年の9月からMBAに通うつもりだ。正式なサインは81日まで猶予があるが、今週の早いうちに決めようと思う。家族や仲良い友達・同僚はお祝い会を準備してくれているし、受かったことは素直に嬉しいし誇らしい。MBAは大したこと学べないという声や、誰でも入れる、24歳で入っても経験不足だから意味ない、なんて思っている大人が世間に一定数いることは知っているし、自分もどちらかというと今まではそっち側の人間だった。

 でも24歳でそれも19まで英語圏外に住んでて、現地就職してMBAも受かって、これからはそれを両立しようとしている人は、少なくとも僕の知り合いには自分以外いない。理由が刺激であれ、他者からの承認欲求であれ、ここまで結果を残してきているわけで、それに値する努力を長年積んできているわけで、誰に何を言われようが自分のしてきたことに対する自信・誇りはもちろんある。強みを理解している分、自分の弱みや成長が必要な部分などもたくさん見えてしまうわけだが。

 スケジュールやプログラムの詳細は今週から8月にかけて見えてくると思うが、早くてもスタートは9月中旬だったような気がする。ということで、新生活へ向け2ヶ月弱となったが、その前に1ヶ月ほどバケーションを取る予定だ。8月末には友達とニュージーランドにロードトリップに行く予定だが、その前後にもどこかに行きたいなと考えている。新聞業に関しては、バケーション前か後かはわからないが、夏に辞めようと思っている。自分の連載コラムなどもあるので完全には辞めないだろうが、割いて週に数時間くらいまでには減らしたい。テリヤキ屋さんに関してはMBAケーススタディとして使わせてもらうつもりではあるが、実際にお店に出向いて手伝うというのはなかなか難しくなるだろう。

 ちなみに授業は月水18:00~21:30というスケジュール。日月火水6:00~16:30のスケジュールで会社で働いているため、週の前半がヘビーな生活が今後3年続いていくことに対する不安は少々ある。だが、授業・課題・試験の難易度などは始まってみないとわからないし、今何か自分にできることはない。とりあえず今はあまり不安に思わずに、旅行と、好きな人たちと遊ぶことを存分に楽しみたい。

 最後になるけど、MBA合格を祝福してくれた人たち、そしていつも応援メッセージをくれる人たち、本当にありがとう!! 応援してくれる仲間がいることはモチベーションになるし、いつか何かの形で恩返ししたい!